MONOLOGUE

手渡すよろこびを、味わった日

※ こちらの記事に掲載している画像は映画「人生フルーツ」に登場する映像の一部です。
※画像の著作権はすべて東海テレビ放送に帰属します。


先日の2月4日のこと。
私は朝から南青山へと向かいました。

この日は私にとって大切な日。
映画「人生フルーツ」の上映会を行うのです。

20名の方々がお越しくださることになっていて、なかには関西方面や長野など、遠方から駆けつけてくださる予定の方も。

立春という節目の日に、その面々とご一緒に映画を鑑賞できると思うと、胸が高鳴ります。

「人生フルーツ」は、私が昨年見た中で一番感銘を受けた映画です。2017年に公開された作品ですが、たまたま友人づてにこの映画のことを知り、リバイバル上映されている劇場を探して足を運びました。

人生フルーツ オフィシャルサイト

この映画は、愛知県に住む建築家ご夫婦(津端修一さん90歳、英子さん87歳)の暮らしぶりを描いたドキュメンタリー映画です。

お二人の暮らしを飾らずそのまんま写している映画。その「日常」を垣間見させてもらっているうちに、心の中にいくつもの問いが浮かんでくるのです。

「本当に大切なものは、なんですか?」
「とき、とはどんなものかしら?」
「つないでいきたいもの、とは?」
「生、そして死とは?全うするとは?」

それは鑑賞直後だけではありません。

折に触れてふとした時に、何かを私に問いかけてくる。決して押し付けがましくはないのです。ただ、淡々としたお二人の暮らしと重ねて来た歴史の中に、私の心がそれらの問いを映し出してしまう。

映画には、樹木希林さんのナレーションでリフレインされる言葉があります。

風が吹けば、枯葉が落ちる。
枯葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。

こつこつ、ゆっくり。
人生フルーツ。

次第に私は、この映画を私のところで留めてはいけない、と思うようになりました。

これを「衝動」というのでしょうか、胸の中で何かが自分を動かしているような感覚でした。

「上映会を、しよう」

この映画を教えてくれた友人、新田真由子さん
一緒に鑑賞した友人、白河晃子さん

3人でささやかな上映会をしよう、ということになりました。

日付は総意で、立春の日と決めました。

劇中に、春の桜並木を津端ご夫妻が肩を並べて歩いている象徴的なシーンがあるのですが、そのイメージが頭に浮かび「春しかないね」と一致しました。

上映会はビジョンブリッジのオフィスに併設されているスタジオを使うことにしました。

会社設立以来、こういったイベントを主催するのは初めてでしたが、ここに大切な方々が集ってくださることはとても喜ばしいことのように思えました。

今回は大きく告知する、ということはあえてしませんでした。

限られたお席しかご用意できないこともありましたが、この作品を「雑に扱ってはいけない」という気がしたのです。

つつましやかに暮らしを営んでこられた津端ご夫妻。
素晴らしい作品をつくってくださった制作クルーの方々。

その方々を思うと、私たちが作品をいわゆる「モノ」として扱ってはいけないと思いました。

この映画にご興味をお持ちいただけそうな方、見てほしいと思う方をお誘いして、心を込めてお手渡ししたい。

そんな思いから、3人それそれが是非に、と思う方々を個別にお誘いいたしました。

当日の会場は、とてもあたたかな雰囲気だったように思います。

「人生フルーツ」をきっかけに、皆の心が(涙腺も)ふっと緩んだ、とでもいうのでしょうか。

上映後に行ったワークショップでは、不思議と集まってくださった方々の言葉に全くカドがなく、まぁるくまぁるく感じたことを分かち合っている姿が印象的でした。

心に留まったシーンを、ご自身の原体験と重ね合わせながらお話しくださる方。
大切な人を思い浮かべながらお話しくださる方。

そこには、忘れていたことを思い出したかのようなピュアな眼差しがあり、飾らない姿に溢れていました。

節目となる日にこうして集い、同じものを見てひとときを分かち合う。
それはとても愛おしい時間、だったように思います。

上映会翌日、どこかふわふわとした気持ちで過ごしていた私に、ご参加くださった方々から嬉しいお声をいただきました。

「じんわりと大切にしたいものが
 沁みてくる映画。
 このご夫婦を知れて本当によかったです」

「なんでもない日に最善を尽くす。
 続けているとやがて
 豊かさ、という果実が実る。
 その実をお裾分けいただきました」

「昨夜から余韻が全く冷めず
 あれこれ思いを巡らしながらも
 わくわくしていて不思議な感じ。
 早速夫が上映中の映画館に向かいました」

あぁ、企画して本当によかった、と思いました。

昔、運動会であった「ボール送り」ってありましたけれど、今回の上映会のイメージは、まさにそんな感じだったのです。

縁あって私の元に手渡された「人生フルーツ」という美しい玉、それを自分たちにできる最善のかたちで次の方へと手渡した。

今回お越しくださった方がまたどこかで大切な方にお話しくださり、その方が劇場に足を運んで、また次の方へと手渡されていく。

「本当にいいもの」は、当たり前にそうやって継がれていくものなのでしょう。

最後に、この上映会の関係者をご紹介させてください。

≪企画・運営メンバー≫

新田真由子さん(映画を私に手渡してくれた友人)
PRアドバイザー / コーディネーター。岐阜県出身。愛知、東京での仕事を経て、福島県在住。福島では、地域と人をつなぐコーディネーターとして大学生の被災地実習や人材育成等に携わった後、フリーへ。現在は、個人や事業者さんの想いをカタチにするためのPRサポートや、自身でも取材を行うほか、福島を中心とした東北や、岐阜県などのツアー企画や現地コーディネートも行っている。

白河晃子さん(映画を一緒に見にいった友人)
フリーランス秘書。株式会社おともや代表。埼玉県出身、鎌倉在住。大学卒業後、銀行にて法人営業職として10年間勤務。独立後、中小企業や個人事業主の事業サポートを行う株式会社おともやを設立。秘書・アシスタントという枠にとどまらず、事業全体を伴走している。鎌倉での暮らしぶりや自身の変化をつづる読みものサイト「かまくらのおと」を通じて、エッセイやコラムなどの表現活動も行う。

≪おみやげをご用意くださった方々≫

今回のお土産はオリジナルでご用意しました。

せっかくなので「人生フルーツ」のイメージに合わせたものにしたい。自分達がいただいてみて本当に美味しいと思うブランド、お店にお力添えいただきたい。

そんな思いで、ハーブティーと焼き菓子の詰め合わせをお手渡ししました。

Soel 赤川典子さん
ハーブティーブランドのSoelさんに、映画をイメージしたお茶をブレンドいただきました。

・オレンジピール(温め)
・ローズヒップ(ビタミンC)
・レモングラス(消化サポート)
・レモンバーベナ(心の落ち着き)

冬から春へ心身ともに揺らぎやすい時期に、ほっと一息ついていただけますように。

Niconicodoさん
福島県南相馬市にある納屋カフェ「Niconicodo」さんには、映画に合わせた焼き菓子をご用意いただきました。津端ご夫妻をイメージして、アイシングクッキーのほかフルーツやハーブを使った焼き菓子をおつくりいただきました。

ご用意いただいたお菓子たちはこちら

お越しくださった皆様、本当にありがとうございました。またどこかでお目にかかれますことを、楽しみにいたしております。

Vision Bridge inc.
大磯爵歌