MONOLOGUE

感性と感触で、生み出される世界

今日は横浜は雨。
そろそろ梅雨入りの様相ですね。

私は打ち合わせがあり、都内まで出ていたのですが、街の空気もどことなく重さを纏っていてね。

月曜日で雨足も強く、なんともグレーに見える街並みだったわけですが、その道すがらで、とても美しいものを見たのです。

それは、
あるお宅の玄関先で枝を伸ばしていた糸もみじ。

糸もみじって、葉に深い切れ込みが入っていて、糸のように垂れ下がっているのですが、そのふんわりとした葉に、雨のしずくが絡まるように乗っていてね。

まさに水の玉といった風情で、一粒一粒が透明に、輝いているようにみえたんです。

それを写真に撮りたいとスマホを向ましたが、うーん、いまいち。

目で見て、心が動いたそれを、写真にすることができませんでした。
あの美しさは、撮れなかった。

カメラ持って来ればよかった、と思わなくもなかったけれど、すぐに思い直しました。

これはこれでいいのよね、と。

何でもかんでも、写真にして残せばいい、というわけではありませんよね。

きっとこれは、今ここで楽しみなさい、ということ。

葉に雨が当たる音に、しばし耳をすませました。

サーってね、優しい音、でしたよ。

このメルマガを書くにあたって、「糸もみじ」について、少し調べたんですけどね、正式名称を知って改めてグッときたんです。

「琴の糸」っていうんですって。

私があの場で聞いた雨音と名前を、重ねずにはいられませんでした。

日本画の世界に触れる

さて、前置きが長くなりました。

今日はですね、画家の熊川みのりさんのグループ展に、先日足を運んでまいりまして、そこで感じたことを言葉にさせてください。

熊川みのりさん
https://www.instagram.com/minori.kumakawa/

みのりさんとは、メールやメッセージで、いつもやりとりさせていただいていましたが、彼女の言葉の選び方や、気になるモノ・コトへの心の傾け方が、どこか重なるものがあるように感じていて、いつか絶対お目にかかるだろうな、と思っていました。

なので、グループ展のご案内を拝見したときは、今だ!とピンときまして、彼女の作品を直に拝見しながら、是非ともみのりさんにご挨拶を!と思いたち、伺ってまいりました。

日本画の世界にちゃんと触れるのは、正直なところ初めてでしたが、

まず驚かされたのは表現の幅。

日本画というと、私は古典的なものだけを想像していたのですが、いやいやそんなことはない!!

画材のテクスチャーを使い分けながら奥行きのある表現をしている作品、
底材に縫い目を入れて凹凸を出した作品、
モダンな印象の作品、

とにかくその幅の広さに、驚かされました。

みのりさんが日本画の画材についても、教えてくださったんですけど、顔料はすべて自然のものなんですって!

くるみの殻、藍、炭、金粉などいろいろとご紹介くださったのですが、そういった自然からいただいたものを、塗って、乾かして、塗って、乾かして。
※乾かすのに時間がかかるのだそうです。

こうして重ねていくからこそ、生まれる奥行きがあって、あぁ、これが、日本画の世界なのだな、と体感させていただいた感じでした。

しかも、その顔料はチューブから出して塗っているわけではなく、砂状のものを練り合わせて色を作るんですって。

画家の指先の感覚で、顔料を膠や水と合わせていくらしいのですが、その時の湿度や季節、表現したいもの、全てを鑑み「これだ」という調合にする。

指先の感触で調合する、というのが、これまた引き込まれるポイントで、ご自身の感性と感触を信じ、自然と重ね合わせていくというね。

わずかな時間でしたが、そうやって生み出された作品たちに触れられたことが、とても貴重な経験となりましたし、なにより「日本画」というものへの興味の扉を開いてしまったようにも思いました。

「表現」を、分かち合う!

みのりさんの作品は、日本画のほかに、カリグラフィーと日本画を合わせた扇子、一部水彩画も展示しておられました。

それらを前にして彼女は「何屋さんか分からなくなってきた」なんて笑っておられましたが、私にはその笑顔がとても眩しくうつりました。

表現したい何かがある。

その手法に枠をつくることなく、いろいろな方法をトライしながら、表現したいテーマと衝動にピュアである姿。

そうやって生まれたものが、ここにある作品なのだと思うとね、とてもみずみずしく見えました。

みのりさんとは、いつか、何かを、ご一緒にやれるといいですね、なんて言い合って別れました。

今すぐ、これを!じゃなくていいと思うんです。

時が熟して、ぴったりの事案が訪れた時に、
あ!いっしょにやろう!と互いに思えるつくり手のつながりがある。

それがたまっていくことが、私にとっては最高にエキサイティングなんだよな^^

みのりさんのグループ展は、銀座の森田画廊さんで、6/11まで開催されています。

第13回【こころばえの会】
銀座 森田画廊
http://www.ginzamoga.com/

6月1日(水) – 11日(土) ※5日(日)は休廊
営業時間:午前11時30分〜午後6時30分
(最終日は午後5時まで)

ご興味のおありになる方は、是非是非、足をお運びくださいませ。

9名の女流作家さんの「今描きたいもの」をテーマにしたグループ展なので、個性が光り、見応えがありますよ!