MONOLOGUE

生身の情報と身体感覚

今朝は雨音と共に目が覚めました。
関東もようやく梅雨入りのようですね。

雨の季節はあまり得意ではありませんが、今日は妙にこの音にほっとさせられる。

もともと外出の予定もなかったので、いくつかの仕事の合間をぬって、このお便りを書いています。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。


先日、久しぶりに故郷の岩手県花巻市に帰省してきました。お正月以来だから約半年ぶり。少し間が空いた感覚です。

岩手県内で気になるイベントがあったので、告知を見てすぐに帰省を決めたところ、偶然にもその日は父と亡き祖父の誕生日!

せっかくなら誕生会をしようという話がもちあがり、それならば、と仙台にいる妹家族もタイミングを合わせて帰省することになり、思いがけずに家族が集まることになりました。

6月に帰省するのは息子の里帰り出産以来ですから、もう11年ぶりのことです。

花巻は思ったよりも暑く、山も田も畑も庭も、夏待ちをしているようでした。風景全体の色が濃く、夏至前のうごめく静けさを感じます。

連なる山脈は手前の方が深い緑色、奥にいくほどに藍色へと変わっていきます。

田植え後の田圃もどこか落ち着いていて、薄く貼られた水がなんとも美しい。

驚いたのは以前米を育てて場所が、いくつも麦畑に変わっていたことで、刈り取りを待つ穂が黄金色に輝いていました。

休ませずに転作する人が増えている、というのは父の話ですが、七十二候「麦秋至」を初めて実感しました。


ここでは、情報の入り方が違うのですよね。

生身の身体で感じ取ったものが、そのまま一緒にいる人との会話になる。

目に入ってくるもの
耳に入ってくる音
鼻に入ってくる香り

気になるなにかを捉えるたびに自然に
「あれは何?」「どうして?」と聞くし
「きれいだね」「いいねぇ」と分かち合う。

あぁ こうやって私は、身体感覚で受け取る情報で育ってきたんだなぁ、と改めて思いました。

今いろいろな取り組みに参画する中で、私は現場での体感値を信じる傾向があると自分でも思っていましたが、起点はこの地にあるのかもしれません。

そしてそれは、私のみならず都会に暮らす子どもたちにも、なにかの一雫を落としている気がします。

畑仕事をする母について回って玉ねぎやじゃがいもを収穫し、きゅうりなどはその場でガブリと試食!

マルベリーやグミの実も収穫しましたが、うっかり籠を置きっぱなしにしたら蟻の大群が押し寄せてきて大慌てです。

向こう側では父が熊避けのラジオをかけながら、草刈りに精を出していましたし、息子は用水路にザリガニやどじょうがいるのを見つけて、バチャバチャ網を振り回していました。

こういう環境にほんの少しでも身を置くことで、きっとなにかは感じているはず・・・と思わずにはいられないのは、子どもたちの動きがどこか野生味に溢れ、いきいきとしているように見えたからです。

人だけではなく植物も動物も虫も鳥もいて、季節の巡りの中で互いをなんとなく横目で見ながら暮らしている。

小難しい説明なんてなくても、そういう風景をむしろ子どもの方が、身体全体で当たり前に受け取っているような気がしました。

そうこう過ごすうちに、結局私は今回の帰省の目的になったイベントには行かずじまいになってしまいました。

興味どまんなかの内容でしたし、足を運んだら間違いなくすばらしい場を見ることができたでしょう。気づきや出会いもあったかもしれない。

でもなんとなくこの環境に身を置くうちになんとなく身体が動かなくなってしまった。

それは「実家でまったりしてしまった」と言ったらそれまでなのかもしれませんが、今はなにか新たなものを外に求めなくてもいいのかも・・・とじわり湧いてきたからのように思います。

大切な家族が揃っていて、たまたまだけれど父と亡き祖父のお誕生日が重なっていて、子どもたちが自由に外を走り回っている。

皆がのびやかで、笑顔。

「大切にしたいものが全部ここにある」

そう思った時、なにかが鎮まっていったような気がしました。

もしかしたら知らず知らずのうちに、息急き切って動いていたのかもしれません。

帰り際に母から、季節料理のレシピを教えてもらいました。

祖母や叔母から引き継いだ、梅干し、漬物、山菜料理などの「家の味」
それらを母はノートに手書きでメモしており、初めて見せてもらったのです。

材料を収穫した日とその量、誰から教わったかなどがラフに記され、中には作ってみた上で、母流の材料や手順が書き加えられた跡も。

「前はこんなの見向きもしなかったのに、あなたも年をとったのね笑」

なんて笑われましたが、ここでもまた生身の情報に、ひとつの道を見せられた感覚がありました。

ひとまず今回教えてもらった初夏の野菜を使ったいくつかのレシピ、簡単なものから試してみようと思います。

失敗も含めてノートにそれらを書き溜めていく、なんてことをやってみたら面白いかもな。

果たして私が上手にお漬物をつけられる日はくるのかしら・・・


今日は本当に日記のような内容になってしまいました。

最後までお付き合いくださったことに、改めて感謝いたします。

梅雨のはじまり、どうか養生してお過ごしくださいね。