MONOLOGUE
2022年9月17日
分からないものを、愛する
以前は全く響かなかったものが、時が満ちてようやく受け取る器ができる。
昨日はまさにそんなことを感じる夜。今もまだじんわりとその余韻に浸っています。
昨晩ふと思い立って映画を見たんです。
夜に映像を見る習慣はほとんどないのにどうしても気になって仕方がなかったその作品は、樹木希林さんが亡くなってから公開された 日々是好日 。
実は2018年にも一度見ていた作品ですが、正直なところ当時はその味わいがよく分からなくてね。
なかなか前に進まない映画だなぁ、なんて思っているうちに居眠りしてしまっていました。
それなのにどうしても今もう一度見たくなったのは、いくつかの情報やタイミングが重なったから、かな。
私がこれを見るべきは、きっと「今」だったのだと思います。
希林さん演じる武田先生のお茶室へ、誘われていく感覚とでもいいましょうか。
ゆっくりとながれる時間の描写も、黒木華さん演じる主人公がお茶のお稽古を通してものの道理に気づいていく様子も、画面を超えて身体に染みわたっていく。
移りゆく季節の中にいて、喜怒哀楽をやりすごしながら時を刻んでいく。
「生きていく」ってまさにこういうことなのかも・・・なんて思うと、そのみずみずしさに涙が溢れて止まりませんでした。
この3年ほどで私自身も気づかないほどゆっくりと、でも確実に変化していたのでしょう。
同じ作品がこの振れ幅で響くようになるなんて、自分でも驚きました。
かつての私を振り返ると、確かに分かりやすく展開するものが好きでしたし、白黒ハッキリ・効率優先で自分を動かそうとしていたように思います。
お恥ずかしいことに、多くのものは「自分の意思次第」とも思っていたようにも思います。
今ではその青さに思わず目を細めてしまうのだけれど、それもまた私のあゆみ。
そんな過去も、今も、抱きしめて
また日々の小波を味わいながら生きていく。
それがなによりも有難いことなのだとエンドロールを眺めながら思いました。
作品の中に出てきた、印象的な言葉があります。
世の中には
「すぐ分かるもの」と
「すぐ分からないもの」の2種類ある
まさに、そうだと頷くばかり。
分からない、けれどなんか気になる、ということが心のどこかに留まっていて、突然腑に落ちることって往々にしてあるように思うのです。
じわりじわりと分かり始めて、ある日突然「こういうことか」と回路が繋がる。熟成される、とでもいうのでしょうか。
それがどんなに愛おしいことかを私は知っているから。
分からないことを、愛する人生を送りたい。
例え一生分からないままだったとしても、ね^^